5か所のすごろくゲームスポットをまわって人狼の面白さを伝える「ゲームライター 田下 広夢が行く人狼伝道の旅」、第1回は兵庫県伊丹市にある、ワイプ阪急伊丹駅前店に行って参りました。こちらでは、8人が集まりまして、ワンナイト人狼1時間と、人狼ゲーム4戦をたっぷり遊びました。その中から、ちょっと面白かった1戦をリプレイしてみたいと思います。
このリプレイは実際のプレイを元にしていますが、名前や、文章で読んで分かりやすい表現等、多少変更している箇所があります。予めご了承ください。
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ゲームライター 田下 広夢が行く人狼伝道の旅 みんなで人狼&ボードゲームを遊ぶ会(すごろくゲームスポットイベント情報)
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「犯人はこの中にいる!」なゲーム 人狼(AllABoutゲーム業界ニュース)
今回のルール
まず、人狼の人数や能力者の設定から。
人狼が2人、占い師が1人、霊媒師が1人、ボディガードが1人、狂人が1人、村人が2人、合計8人の村です。
占い師は最初の夜から占いを行います。ボディーガードは連続して同じ人を守ることができません。
また、特別ルールとして、狂人は自分が狂人であることを明かすことができません。これによって、投票時に、人狼と狂人が協力して勝利する「パワープレイ」を封じます。8人の村で人狼2人と狂人1人はちょっと多くて人狼有利なので、バランスをとるためのルールです。
初日 生存者8名 -2人の占い師が1人の人狼を指すー
その村の基本戦略はこうでした。村人は8人、うち人狼が2人。残り6人のうち、占い師、霊媒師、ボディガードの3人が村にとって重要な能力者です。ということは、夜に人狼が襲撃する際、6分の3、つまり50%ぐらいの確率で重要な役割が失われることになります。
で、あれば占い師と霊媒師は初日から出してしまおう。もちろん、狼に襲撃される可能性はありますが、ほっといても知らぬ間にいなくなって、乗っ取られる可能性が十分にあります。それよりは、まず偽物も本物も全部出して、不確定要素が少ない状態で推理を行う、という作戦です。
占い師または霊媒師は、せーので手をあげるように、声をかけます。「せーの!」
2人の手があがりました。
普通に考えると、本物の占い師と、本物の霊媒師の手があがったことになります。狼も、狂人もだんまりです。ですが一応、せーので自分の能力を言ってもらうことにしました。
「せーの!」
「占い師です」「占い師です」
占い師がお互い顔を見合わせます。もちろん、どちらかが偽物です。そして、霊媒師は村の総意を無視して潜伏していることになります。
村の意向を無視している霊媒師はとりあえずほっといて、占い師2人が最初に誰を占っているか、そして、占った相手が人狼なのか、村人なのかをせーので聞くことにしました。
「せーの!」
「人狼です」「人狼です」
占い師2人は同じ人を指して、しかも人狼だというではないですか。
単純に考えると、占い師以外に人狼を知っているのは、人狼だけです。その道筋から考えれば、占い師の2人は、本物の占い師と、人狼の偽占い師ということになります。この可能性はかなり高そうです。
結論から言うと、占い師のうち1人は人狼でした。彼はたった1人しかいない仲間をあえて人狼だとばらすことで、信用を勝ち取って逃げる作戦でした。しかし運の悪いことに、本物の占い師も仲間の人狼を指していたのです。これは全くの誤算でした。
このままいくと、占い師2人を処刑すれば村人の勝利、ということになってしまいそうですが、実は、ここから彼は奮闘します。今後この偽占い師を、「じんろうのうらないし」でジンナイさんと呼びましょう。
1日目後半 霊媒師を怒る
2人の占い師から人狼だと言われた人は、とにかく処刑しようということになりました。
しかし、問題なのは霊媒師です。今日処刑する人はおそらく人狼ですが、もし万が一そうでなかったら話は大分ややこしくなります。この判定をする霊媒師は非常に重要で、信頼できる立場を確保するべきです。
ジンナイさんは言います。「今すぐ、霊媒師は名乗り出るべきでしょう。明日では遅い、今日の夜本物が襲撃されて、明日偽物があらわれ、『処刑した人は村人だった』って言い出したら大混乱になる。」
ジンナイさんが語気を強めてうながすと、渋々1人が手を挙げます。
霊媒師の言い分は、人狼に揺さぶりをかけたかった、とのこと。どちらかというと揺さぶりをかけられたのは村人の方で、モヤモヤが残ります。しかし、彼以外に霊媒師が出てこないようなので、とりあえず彼を霊媒師として信用することにしました。
ジンナイさんはここで、強く霊媒師を批判することで2つのことを印象付けます。1つは、自分が村のことを真剣に考えているということ。もう1つは、霊媒師が出なかったことが異常である、ということ。
その夜、ジンナイさんは当然霊媒師は襲撃しません、占い師も襲撃しません。霊媒師を襲撃すれば、霊媒師を強引に名乗りださせた自分が怪しまれます。占い師を襲撃しても、やはり敵対する占い師の口を封じたということで疑われてしまいます。なおかつ、どちらもボディーガードが守っている可能性があります。
ということで、まったく関係のない村人を適当に1人選び、襲撃対象としました。
2日目前半 生存者6名 -占い師に人狼だと言われるー
翌日、襲撃された村人が脱落し、生き残りは6人です。まずは霊媒師の結果報告。
「昨日処刑した人は、人狼でした。」
予想通りの結果に、一同うなずきます。続いて、占い師2人の占い結果です。
ジンナイさんは霊媒師を占って村人だったと言うことにしました。
一方、本物の占い師、彼をここからウラナイさんと呼ぶことにしましょう、彼はジンナイさんを占っていました。もちろん人狼だったと宣言します。
さあ、ウラナイさんの言うことを村人が信じれば、簡単に処刑され、村人チームの勝利でゲームは終了します。しかしここから人狼占い師は暴れます。
村人たちは、2人の占い師に、なぜ占う人を決めた理由を聞くことにしました。
ウラナイさんは言います。「なんか僕の他にもう1人占い師が出てきたので、占いました。」
どうやら彼は筋道を立てて論理的に考え話すというよりは、勘に頼って進めるタイプのプレイヤーのようです。実際、2日で2人当ててるわけで、その勘は冴えわたっています。しかし、ジンナイさんは隙ありと判断して、一発演説をぶちあげます。
「僕ら2人はそもそも敵対しているわけで、敵対している相手を人狼だと言って、それは周りの村人に説得力がありますか? 僕かあなたのどちらかが人狼かもしれないということは、他の人が判断すればいいんですよ。」
「あなたは昨日人狼を言い当てていたので、状況的に人狼かもしれないと思っていましたが、そういう明らかに怪しい行動をしてくるところを見ると、狂人の可能性を疑い初めています。彼が人狼だとするなら、まあ公平な視点として僕が人狼という仮定でもいいんですが、その場合狂人は何をやっているのか、という話になりますしね。」
そして、さらに続けます。
「僕は霊媒師の彼を占いました。彼が出てきた状況は異常で、村の人全員が同意して霊媒師が出るように言ったタイミングで出ていません。この時点で霊媒師はなんか変なことを考えているかもしれないと判断しています。もし本物の霊媒師がひねくれ者であの時も潜伏していて、彼が人狼なんてことがあればこの村は簡単に滅ぶでしょう。それを防ぐ為に占ったんです。」
前日霊媒師を叱責したのは、翌日の占い先に説得力を持たせる前ふりだったんですね。最後に
「僕の視点で見ると、霊媒師はおそらく本物、当然昨日処刑した人は人狼ですので、人狼はあと1人です。ウラナイさんが狂人だった場合に村はかなりピンチなので、残りの村人3名から1人を今日の夜占います。」
と付け加えました。彼はこの演説で、あえてウラナイさんを処刑する方向性を出さず、彼が狂人である可能性をにおわせます。実はそれは、暗に村人に自分も狂人の可能性があると思わせるテクニックで、人狼は村人に紛れ込んで潜伏しているかもしれない、というメッセージなのです。
2日目後半 -絶体絶命の大ピンチと、密かなファインプレーー
村人はその日、ジンナイさんを処刑するかで意見が分かれます。
片方の占い師から人狼である、と宣言されたジンナイさんを処刑しようというのは自然な意見です。
今村に残っているのは6人です。
霊媒師、ジンナイさん(占い師のふりをした人狼)、ウラナイさん(本物の占い師)、ジンナイさんを怪しむ村人A、迷っている村人B、黙っている村人C
いよいよ、2日目の投票が始まります。
ウラナイさんと、ジンナイさんを怪しむ村人Aは、ジンナイさんに投票しました
霊媒師と、ジンナイさんは、黙ってしゃべらない村人Cを怪しんで投票。もちろんジンナイさんは怪しんでいるフリですが。
迷っている村人Bは、ジンナイさんにいれようとしましたが、黙ってしゃべらない村人Cがまだ投票していないのを見て、村人Cに入れます。
この時点で人狼占い師が2票、黙ってしゃべらない村人Cが3票。
当然、黙ってしゃべらない村人Cはジンナイさんに入れます。
2人が3票ずつで同票なので、それぞれ最後の弁明をし、決選投票を行うことになりました。ジンナイさん大ピンチです。
ジンナイさんの弁明はこうです。
「人狼と言われたからには、僕を怪しむ意見があるのは分かります。でも、今僕を処刑するのは村にとってリスクが高いです。今日の夜また占って、明日情報を出します、それを聞いてまた判断してください。」
一方、黙ってしゃべらない村人Cの弁明は
「えー、あー、うーん、僕を処刑すると後悔しますよ。」というものでした。
いかにも怪しい村人C。決戦投票の結果、黙ってしゃべらない村人Cが処刑されました。おかげで、ジンナイさんはピンチを脱出。
実は村人Cは狂人でした。最初に能力者全員を出そうという時に出遅れてしまったんです。しかし彼はジンナイさんの言葉を注意深く聞いていました。自分がこの際何もしなければ、占い師2人の中に狂人がいるかもしれないという話で進むんじゃないだろうか、と。
彼は狂人ですから、偽物の占い師が狂人ではなく、人狼であることを知っています。そして、あまりしゃべらず黙っていて、決選投票になったら、いかにも怪しい中途半端なことを言って処刑されたのです。
誰も気が付きませんでしたが、密かなファインプレーでした。
ジンナイさんはその夜、霊媒師を襲いました。
3日目 生存者4名 -迷ったふりー
霊媒師が襲撃されて脱落。霊媒師はほぼ本物だと思われていましたから、確実に村人であるという人を減らす意図での襲撃です。
残りは、ジンナイさん、ウラナイさん、ジンナイさんを怪しむ村人A、迷っている村人Bの4人です。
占い結果を聞くことにします。
ウラナイさんは迷っている村人を占って、村人だったと言いました。彼はすでに人狼2人を指名しているので、残りは村人ということになり、占い結果にあまり意味はありません。
ジンナイさんは、ジンナイさんを怪しむ村人Aを占い、村人だと言いました。彼の理屈はこうです。
「迷っている村人Bは、昨日の投票時、一度僕に入れようとして、票を数え、決選投票にするために投票先を変えました。本当にどちらに入れるか迷っている、決選投票で意見を聞きたいという人の行動で、村人に見えました。なので、もう1人残っている村人を占うことにしたんです。」
さらに続けます。
「僕の視点では、迷っている村人Bか、ウラナイさんが人狼ということになります。ここはもう難しくてどちらがというのは決めかねますが…やはり昨日の投票行動をみると、迷っている村人Bは人狼っぽくない、ウラナイさんが人狼ということになるのかな、と思っています。しかしその場合狂人がまったく何もしていないのは気がかりです…」
ここで誰か1人を人狼だと決めつけて強く処刑に誘導しようとすると、かえって自分が疑われるということをジンナイさんはよく理解しています。なのでわざと、筋道を立てた説明でウラナイさんを疑いつつも、最後の最後で迷っているフリをしています。
3日目後半 ー最後の選択ー
いよいよ投票です。ウラナイさんは迷わずジンナイさんに。迷っている村人Bは真占い師に投票します。そしてジンナイさんを疑っている村人Aは、ジンナイさんに投票。
ここで、ジンナイさんは困ったふりをします。
「えー、そう入れられると、うーん、もうウラナイさんに入れるしかない、ですねこれ。うーん、迷っている村人Bの可能性もあるんですが…村が勝つ可能性を残すためにはしょうがないです」
これでジンナイさんと、ウラナイさんの決選投票。最終弁論で最後の勝負となります。
ウラナイさん「僕は、自分の占いを信じます!」
ジンナイさん「僕の占い結果からすると、ウラナイさんと、迷っている村人Bのどちらにも可能性があります…もう、ウラナイさんが人狼であることを願うしかないです」
結果は、ウラナイさんが処刑されることになりました。
ジンナイさんを疑う村人Aが投票先を変え、ウラナイさんを指したのです。
その晩、迷っている村人Bが襲撃され、脱落。翌朝、生存者2名のうち1名人狼ということで過半数を制圧、人狼チームの勝利が宣言されました。
ほんの僅かな差
最後、ジンナイさんを疑っている村人Aが投票先を変えたのは、ウラナイさんの「占い結果を信じる」という言葉でした。本物であれば「信じる」という言葉は使わないんじゃないかと彼は考えたのです。
それはすごく僅かなことですが、ジンナイさんが最後の最後まで本物らしく振舞うことで、その僅かな差が人狼チームの勝利に傾きました。
本物の占い師と一緒に自分の仲間を人狼だと言って処刑台に送る誤算、出そびれてしまった狂人と、村人有利からスタートしたかに見えましたが、ウラナイさんの隙につけいり、誰も気が付かない狂人の密かなファインプレイー、そして最後の僅かな僅かな差でひっくり返ってしまいました。
偶然が左右し、議論でひっくり返る、人狼の面白さが凝縮したゲームだったかもしれません。
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